野生種ドリアン Durio Graveolensを食す@コタキナバル

野生種ドリアン Durio Graveolensを食す@コタキナバル

ドリアンツアー2025夏編、7日目の昼。

この日は朝からコタキナバル郊外にある動物園ロッカゥイ ワイルドライフパークを訪れ、その後市街地に戻りレストラン街を散策していた。

市街地で昼からドリアンを売っている場所は多くなく、初日に見つけてから定点観察していたこちらのお店を訪れた。

Dovist Chicken Rice · 124, Jalan Gaya, Pusat Bandar Kota Kinabalu, 88000 Kota Kinabalu, Sabah, マレーシア
★★★★☆ · 中華料理店

以前訪れた際にタイ品種のD99クラドゥムトーンが置いてあり、もし売っていればそれを買おうと考え訪れたのだが、、、

おや、見慣れない色のドリアンが、、、、まさか!!!

なんと!!!
野生種ドリアン、Durio Graveolensがあるではないか!!!

コタキナバルを訪れた初日にいくつかの店舗の方と話した際は、まだDurian Dalit(Durio Graveolensの通称)の季節ではないとの話だったため、今回の旅で野生種ドリアンは食べられないだろうと諦めていた。
この日がコタキナバルで丸一日過ごせる最終日で、次の日の早朝にはシンガポールへ移動する必要があった。
そんなギリギリのタイミングでまさかの運が巡ってきた。

多少なりともドリアンを見慣れている方なら、見た目の違いが分かるであろう。
商業品種と比べて細長い棘や、明るいトーンの黄緑色の外皮などが特徴的だ。

比較してみよう。
1枚目が野生種Durio Graveolens、2枚目は商業品種のTupai Kingだ。
商業品種では棘の形は角錐に近く、棘は緩い傾斜で根本に向かって大きく広がっていく。
一方でDurio Graveolensでは根本に向かって広がらず細長いままだ。

興奮冷めやらぬが、とにかく食べてみたい。
価格は75MYR/kgと猫山王並だが、サイズは小ぶりのため55MYR。

割ってもらうと、根本まで細い外皮の棘の特徴がより一層分かりやすい。

こちらのお店はイートインスペースはないため、パックに詰めてもらい近くの広場で食べることにした。


果肉の外観も商業品種のドリアンとは異なる。
1枚目がDurio Graveolens、2枚目は以前紹介したチャニーだ。
個人的に一番違うと思うのが、薄皮の表面の艶だ。
商業品種では未熟→追熟→完熟の順で艶が増すが、それでも右のチャニーのように薄皮自体に僅かな艶(反射) が見られるのみだ。
一方のDurio Graveolensでは薄皮の表面に明らかに水分か油分が乗ったような艶(反射)が見られる。
どんなに果肉の水分が多めの商業品種でも、薄皮の表面に溢れ出ることはないため左のDurio Graveolensのような艶は見たことがない。

手に取ってみる。

まず食べる前に香りを嗅いでみる。
商業品種のドリアンとは明らかに香りが異なる。
いわゆるドリアンっぽさの象徴である硫黄系の香りはほとんどしない。

では、いよいよ憧れの野生種ドリアンDurio Graveolensを口に運んでみる。
そのお味は、、、

え!!!!!!
美味い!!!!!!
まず、甘みがどうか論じる前に、味の系統が商業品種ドリアンとは全く異なる。
まるでカスタードのような味がする。
よく商業品種ドリアンは「カスタードのような滑らかさ」と表現されることがあるが、こちらは味がカスタードだ。
まるでカスタードプリンやタルトを食べているような気分になる。
この味が自然界に生成されるとは到底思えないほどだ。

甘さ自体は控えめで、苦味はそこそこある。
だが香りがあまりにも豊かで、控えめな甘みに全く不足を感じない。
うっすらアルコールのような風味も感じられ、まさに高級スイーツのようだ。

また、口触りの滑らかさも群を抜いている。
商業品種でここまで滑らかな品種には出会ったことがない。
果肉を構成する粒子が非常に細かいように感じる。
当然ながら筋っぽさもない。

この種の唯一の弱点は種が大きく可食部少ないことだ。
この辺りは選別された商業品種との違いかもしれない。

それにしてもDurio Graveolensは凄い。
なぜこの種類が商業栽培されないのか不思議に思ってしまう美味しさと同時に、こんな果物が自然に生えていたらスイーツを人の手で作らなくてもいいのではと思えてしまうほどだ。
近代的なスイーツが開発される前の時代にこのドリアンを食べていたボルネオの人々は、世界で最も美味しい食べ物を食べていた人々と言っても過言ではないのではなかろうか。

ちなみにDurio Graveolensには黄色、オレンジ、赤色の3種類が存在し、今回紹介したものは黄色の派生種だ。
オレンジ、赤色のDurio Graveolensはどうやら9月、10月が収穫期らしく、今回訪れた8月中旬に手に入れることはできなかった。

Durio Graveolensはボルネオ島や一部の移植された地域のみで食べることができるため、なかなか巡り会えないドリアンではあるが、ドリアンが好きな方にはぜひ機会があれば食べていただきたい。
商業品種の美味しさとはまた違った美味しさを持つドリアンであり、当サイトとしてもトップクラスにおすすめのドリアンとなった。
また、今回食べることができなかったオレンジ、赤色のDurio Graveolensにもいつか挑戦してみたいと思う。